「実家を売りたいが、駅から遠い築40年の木造」「相続した土地が再建築不可だった」「兄弟との共有名義のまま話が進まない」— こうしたいわゆる「訳あり物件」は、通常の売却ルートでは買い手が見つかりにくいのが実情です。
ただし、売れないわけではありません。売り方には大きく「仲介」と「買取」の2つのルートがあり、物件の状況によって適した方が異なります。この記事では両者の違いと使い分け、査定を依頼する前に準備しておくべきことを解説します。
「仲介」と「買取」の基本的な違い
| 仲介 | 買取 | |
|---|---|---|
| 買い手 | 市場の個人・法人を探す | 不動産会社が直接買い取る |
| 価格 | 市場価格に近づきやすい | 市場価格より低くなるのが一般的(再販時の改修費・リスクを業者が負担するため) |
| 期間 | 数ヶ月〜(買い手が見つかるまで不確定) | 短期(現金化まで数日〜数週間の業者もある) |
| 仲介手数料 | かかる(法定上限あり) | かからないのが一般的 |
| 契約不適合責任 | 売主が負うのが原則(特約で調整) | 免責とする業者が多い(契約条件を要確認) |
| 向いている物件 | 立地・状態が市場で通用する物件 | 訳あり・築古・早期現金化したい場合 |
単純化すると、「高く売りたい・時間をかけられる」なら仲介、「早く確実に手放したい・市場で売りにくい事情がある」なら買取という整理になります。
「訳あり」の内容によって、買い手のいる市場は違う
ひとくちに訳ありといっても事情はさまざまで、それぞれに対応する専門の買取業者が存在します。
- 再建築不可・未接道: 隣地との一体利用や旧法の活用ノウハウを持つ業者が対象
- 共有持分: 自分の持分だけを売却できる場合があります(他の共有者との関係に影響するため、事前に弁護士等への相談を推奨)
- 築古・空き家: 解体前提・リフォーム再販前提で値付けする業者が対象
- 心理的瑕疵(事故物件): 告知義務(宅建業法・国土交通省ガイドライン)を踏まえた専門業者がいます
- 借地権・底地: 地主・借地人との権利調整を専門とする業者が対象
つまり「うちは訳ありだから安くしか売れない」と一般の仲介会社1社の査定だけで諦めるのは早計で、その事情を専門に扱う相手に当たっているかが価格を左右します。
査定を依頼する前に準備しておくこと
- 権利関係を確認する — 登記名義は誰か(相続登記は済んでいるか)。2024年4月から相続登記は義務化されています。共有名義の場合、売却には原則全員の同意が必要です
- 物件の基本情報を集める — 所在地・土地建物の面積・築年数・接道状況。固定資産税納税通知書・登記識別情報・測量図など、手元の書類を揃えておくと査定がスムーズです
- 残置物・現況を把握する — 家財が残っているか、雨漏り・傾きなどの不具合はあるか。隠さず伝えることが、後のトラブル(契約不適合責任)の防止になります
- 希望条件に優先順位をつける — 「価格」「スピード」「手間の少なさ」のどれを優先するか。これが仲介か買取かの分かれ目になります
- 複数の相手から査定を取る — 査定額の根拠(周辺成約事例か、再販計画か)を確認しながら比較します。1社の言い値で決めないことが鉄則です
査定〜売却の流れで知っておくべきこと
- Web査定はスタート地点: フォーム入力後、電話やメールで物件情報の確認(ヒアリング)があり、そのうえで机上査定→現地査定と進むのが一般的な流れです。連絡が来ることを前提にスケジュールを組んでおきましょう
- 査定額と成約額は別物: 特に仲介では、高い査定額を提示して媒介契約を取ろうとするケースもあります。額の根拠を必ず聞いてください
- 買取の契約条件を確認: 契約不適合責任の免責範囲、引き渡し時期、残置物の扱い(そのままでよいか)を書面で確認します
- 税金の確認: 売却益が出る場合は譲渡所得税がかかります。相続した空き家は3,000万円特別控除の特例(期限・条件あり)が使える場合があるため、売却前に税理士等へ相談を(相続した実家・空き家をどうするか参照)
複数社比較を効率化する — 一括査定・専門買取の資料請求サービス
「複数の相手から査定を取る」を1社ずつやるのは手間がかかります。そこで使えるのが、一度の入力で複数の不動産会社・買取業者へまとめて査定や資料請求を依頼できるサービスです。
- 向いている使い方: 相場観をつかむ初動の情報収集。特に空き家・訳あり物件は対応できる会社が限られるため、「対応可能な会社を探す」工程そのものを短縮できます
- 申込後の流れ: 各社から電話・メールで連絡が来て、物件情報の確認を経て査定提示となるのが一般的です。連絡対応の時間を見込んでおきましょう
- 注意点: 提示された査定額の根拠(周辺成約事例か、再販前提の買取価格か)を必ず確認すること。高い査定額=良い会社ではありません
よくある質問
Q. 不動産売却の仲介と買取はどう違いますか? どちらを選ぶべきですか?
仲介は不動産会社が買い手を探す方式で、価格は市場価格に近づきやすい一方、買い手が見つかるまで期間は不確定です。買取は不動産会社が直接買い取る方式で、数日〜数週間で現金化できる業者もありますが、再販時の改修費とリスクを業者が負担するため価格は市場価格より低くなるのが一般的です。仲介手数料は仲介ではかかり、買取ではかからないのが一般的。契約不適合責任は仲介では売主が負うのが原則、買取では免責とする業者が多くなります。高く売りたい・時間をかけられるなら仲介、早く確実に手放したい・市場で売りにくい事情があるなら買取、という整理になります。
Q. 再建築不可の物件でも売れますか?
売れます。ただし通常の仲介市場では買い手がつきにくいため、隣地との一体利用や旧法の活用ノウハウを持つ買取業者に当たれているかが価格を左右します。一般の仲介会社1社の査定だけで「安くしか売れない」と諦めるのは早計です。査定前に登記名義(相続登記の完了。相続登記は2024年4月から義務化)・面積・築年数・接道状況・残置物や不具合を整理し、複数社から査定を取って額の根拠(周辺成約事例か、再販計画か)を比較してください。
Q. 事故物件や共有持分などの訳あり物件は、どこに相談すればいいですか?
事情ごとに対応する専門業者が違います。再建築不可・未接道は一体利用や旧法活用のノウハウを持つ業者、共有持分は自分の持分だけを売れる場合があり(他の共有者との関係に影響するため弁護士等への事前相談を推奨)、築古・空き家は解体前提/リフォーム再販前提の業者、心理的瑕疵(事故物件)は告知義務(宅建業法・国土交通省ガイドライン)を踏まえた専門業者、借地権・底地は権利調整を専門とする業者が対象です。相談先を「不動産会社」とひとくくりにせず、自分の物件の事情を専門に扱う相手を複数当たることが重要です。
まとめ
訳あり物件・空き家の売却は、①事情に合った売却ルート(仲介か買取か、どの専門領域か)を選ぶ、②権利と物件情報を整理してから査定に臨む、③複数の査定を根拠ごと比較する — この3点で結果が大きく変わります。
本サイトでは今後、売却ルート別の実践記事を追加していく予定です。